軍団モモオ

　何年か前にゲド戦記を見て、甘い初恋を思い出しました。それは、幼稚園でオッパイをすき放題、触らせてくれたマチコ先生のことではありません。
　ぼくの初恋は夕暮れの海で産まれました。ゲド戦記の中にテルーが歌を歌っているのを、主人公がこっそり聞いてるシーンがありますが、ぼくも夕日の中で歌を歌う少女を見つけました。少女は海がどうのとか歌っていましたが、なんの曲なのかは今も分かりません。
　そのとき、ぼくは美しすぎて動くことが出来ませんでした。あまりに優しい声、あまりに幸せで、眠くなりました。その止まりかけのオルゴールのような歌を永遠に聴けたら、ぼくは人生を差し出したってかまわなかったのです。
　その幸せな時間は、すぐに終わりを告げました。少女はこっそり覗いている、チャックの開いた少年に気づいてしまったのです。少女は、赤くなったほほに両手を当てて、走って逃げていきました。その少年にはまだ少女を追いかけて「牛乳でも、飲みませんか？」という勇気は到底ありませんでした。

　それが私の初恋でした。それから毎日、その浜辺で少女を探しましたが、少女は二度とその浜辺に現れることはありませんでした。
　あれから何年がたったでしょう？今でも海を見るたびに、少し胸がチクッとします。

　私はある日、街角で偶然、その歌を聞きました。その歌はジュディー・オングの「魅せられて」。１号は初めて、その歌をきいたとき「大人たちはぼくらが眠った後に、すごくいやらしいことをしている」と両親の監視を始めたそうです。

　何もかも思い出しました。そうです、確かに少女は「女は海～好きな男の腕の中でも、違う男の夢を見る、ううう～私の中でお眠りなさい～なんとかかんとか～女は海～・・・」と歌っていました。しかも振りつき。

　　そういうわけで、私の初恋はマチコ先生に変ったのです。