軍団モモオ

　　 近頃は、まったく冷え込んできて外に出るのもイヤになります。しかし人生は冬の時代に咲いてこそ、美しいのです。冬に咲く花は、虫も少ない、太陽も弱々しく、温度も低い、そんな悪条件であえて咲くのはライバルが少ないからなのでしょう。木ノ葉も落ちて、太陽も浴びやすいし。


　あれは、まだ私がいたいけな少年だった頃、小学校の同じクラスにキレイな副委員長がいました。真面目で優しくて非の打ち所のない少女でした。それでも、不幸は誰だろうとおかまいなしに降りかかります。

　ある日、急に彼女の両親は離婚し、彼女は母親と二人だけで暮らすことになりました。そのころの私は離婚というものの存在すら知らない、無邪気な子供でした。それでも彼女は、以前よりさらに優しく、挫けず、美しくさえなりました。不幸がその人をよりいっそう輝かせているようにさえ見えました。

　うちの弟は泣いてる女の子や、喪服を着た未亡人を見てハッスルするタイプですが、彼女が悲しみを背負って、よりいっそう頑張れる理由が私にはわかりませんでした。

　そのまま月日は流れて、私たちは大人になり、彼女の噂さへ聞かなくなりました。

　先日、街を歩いてると花屋さんがあったので、店の女の子をチェックしていました。花屋の女の子は毎日、キレイな花を見ているせいでキレイになっていくのかもしれないからです。毎日、キレイなものを見ていればキレイになるというは意外と本当かもしれません。ミラーニューロン？。

　花屋の女の子が、「〇〇君、久しぶり。」と話しかけてきました。ああ、あの副委員長です。すっかりいやらしい身体になっているので気がつきませんでした。しばらく、身の上話をしていましたが、彼女は昔のまま、しおれずに生きてきたようです。私は、なぜ両親が離婚したあと、あんな風に頑張っていたのか聞いてみました。

　「福寿草って花はね、冬に咲くのよ。つまんない花だけど、冬に咲くから大事にされるのよ。人もおんなじよ。」

　彼女は、そう言って、多くは語ろうとしませんでした。

　人生、春を待って、長い冬を耐えるより、冬に咲いちまったほうがいいらしいな、彼女は、そう教えてくれたような気がします。

　私は彼女に、「また、来るよ。」と言って何も買わずに店を出ました。私に花は、もう必要なくなったようです。

　だって、私はあした咲くのですから。