軍団モモオ

　　私の知り合いに「幸せを呼ぶ絵かき」と呼ばれている人がいます。別に、絵が売れなくてインチキをしているわけではありません。雑誌の広告なんかでは１枚、５万くらいで売ってるのをよく見ます。

　彼に絵をもらって、今まで誰とも付き合えなかった人が、お見合いパーティーで結婚相手を見つけたとか、癌だと宣告された人が実は癌でなかったり、実の父親が通りすがりの別人だったりとか、びみょうな幸せの報告がぞくぞく寄せられています。

　私は呪いのビデオも、幸せを呼ぶオカリナも信じません。（もうダマされんぞ！）それでも、そこに幸せが描かれていて、それを見ると幸せな気分になるのであれば、もう幸せなのかもしれません。

　そんなことより、悔しいのは彼が幸せそうに絵を描くことです。自分でも、絵を描いてるときが世界一、幸せと彼は言います。私も頑張って、オカリナを吹きながら絵を描いてみますが、楽しくすらありません。オッパイを見るのは好きですが、もうオッパイは描きたくありません。

　最近、幸せを呼ぶ絵かきさんは、もっと苦しみを覚えるぐらいに練習しなければ！と考えるようになってきました。でも、彼に絵をもらった人々は、「今のまんまでいいから。」と言います。もし、何かが変わったら効果がなくなるかもしれないと心配しているのでしょう。

　ちなみに私も最近、練習するなと言われてしまいました。これ以上、描くと犯罪に走る恐れが！と心配しているようです。

　それでも、幸せを呼ぶ絵描きさんは、みなの心配をよそに夜遅くまで絵を描いているようです。もっとうまくなれば、もっと人を幸せにしてあげられるかもしれないと頑張っているようです。その辛い練習も、彼にとっては幸せなことなのでした。

　そして、私もみんなを安心させるために絵など描かずに、あったかい布団で幸せそうに眠るのでした。