軍団モモオ

　　今日、AMラジオしかないオンボロ車に乗っていると、ラジオからアバのダンシングクイーンが流れてきました。懐かしい気分に、ふと私は、むかし劇団にいた部長のことを思いだしました。その昔、うちの劇団どんぐり部にはダンシングクイーンと呼ばれる初代部長がいました。

　私が入る前のどんぐり部は前衛的で、ダンスがメインだったらしいのです。ダンスの本質に近づき居すぎ、ダンスが次第にセックスに変わっていくミュージカルがあったらしいのですが、配役に女子は誰も手を上げませんでした。

　しまいには、男同士で演じろ！ということになり、気がつくとクィーンしか部員がいなくなってしまいました。それでもクィーンは　一人で踊っていたそうです。「踊っていなければ、泣いてしまうから。」彼女は、そう言っていました。

　そして、劇団の方向性をストリップから、コントに変えると部員は少しずつ、増えていったそうです。しかし、あくまでもダンスにこだわったクィーンは、オチのところで面白く踊る、爆笑を呼ぶ踊り、でしめくくってしまうのです。

　諸悪の根源がクィーン以外なにものでもなかったので、部長選挙が行われました。クィーンは全員一致で部長から陥落しました。しかも、投票用紙にはダンス部に行け、とか「お前のダンスは足の匂いがする。」とか書かれてありました。

　それでも、クィーンは一人で踊っていました。「踊っていなければ、泣いてしまうから。」彼女は、そう言っていました。

　そして、クィーンはダンス部に追放されました。

　もう今ではクィーンが、どこで踊っているのかさへ私たちは知りません。それでも、楽しそうに踊っている彼女のことを思い出すと、少し胸が痛みます。「命はダンスしているのよ。」というセリフを思い出しながら、私は少しだけ泣きそうになってしまいました。

　私はダンシングクイーンを聴きながら踊ってみました。「踊っていなければ、泣いてしまうから。」私はなんとなく、そう言ってみました。