軍団モモオ

　冬にする散歩というのは、意外と変わった人々に出会います。

　今日、クソ犬と散歩していると、ハミングしてる年齢不詳の女の子とスレ違いました。彼女は、聞いたことのないメロディーを口ずさんでいます。雲を見ながら歌いだすから、雲から雪が舞い落ちてきました。それは雪の歌だったから本当に雪になったのかもしれません。とてもキレイなので。

　彼女の正体が、私の知らないシンガーソングライターの卵で、すごいメロディーを身ごもっているのかもしれません。そうだといいなと思いながら。私は、どこかで彼女の歌が流れてくるのを夢見ながら春を待ちます。

　うちのクソ犬が、よそ様の犬のしりをクンクン嗅いでいると前からブツブツ独り言を言う詩人が歩いてきました。このオッサンは神様と話してるようです。神様はずっと上の方にいて、さっき雪を降らせたりしてたのかと思っていましたが、このオッサンの心の中にいるようです。

　それだけでなく、誰の心の中にもいるんだそうです、うちのクソ犬のなかにも。ただ心は下の方にあって、尻のところに住んでいるそうです。それで、うちのクソ犬がよそ様の犬のケツをクンクン嗅いでいるのです。

　「ケツにキスしやがれっ！」

　オッサンは、そう怒鳴りながらどこかへ行ってしまいました。

　前から、自転車に乗った服装だけ若いオバサンが来ました。もう、この人は有名人です。死神自転車と呼ばれてて・・・。真っ赤な目で遠くを見つめながら、「殺してやる、殺してやる！」とわめきながら猛スピードで走り去ります。

　誰かに殺すと言ってるわけではなさそうなのでと、油断してはいけません。オバサンの目に見つめられて「殺す」と言われた人は数日のうちに死んでしまったという噂を聞きました。

　死神が私を見つめ合わずに通り過ぎたので、ホッとしていると、前方で神と死神が出会っているようです。

　「ケツにキスしやがれっ！」

　オッサンの怒鳴り声が響きわたりました。