軍団モモオ

　　 私の後輩にゼットンと呼ばれてる女の子がいます。ツインテールにすると宇宙怪獣のゼットンそっくりだからです。彼女は小学６年から毎年、同じ男子にチョコをあげるのですが、恋は実りません。

　だいたい、バレンタインで恋が実ったとか聞いたことないのです。やっすいチョコで人の心が買えると思ったら大間違いです。ゼットン、小６のチョコは空手チョップでバラバラにされています。それでも、彼女のハートは砕けずに、毎年チョコを健気にも送り続けています。少ないおこづかいを、毎月つみ貯めながら。

　私にとっても、バレンタインでなんか書けと言われても困るぐらいですから、誰もが同じチョコレートをあげる中で、差別化するのは難しいのです。ひねりにくいのです。

　それでも、カワイイ後輩のため私は作戦を考えます。私が物語を創るのは、みんなをうっとりさせるためでも、感動の涙を流させるためではありません。私は私の創る物語のように行動してもらい、みんなに幸せになって欲しいだけなのです。

　３年前の作戦は、一生分のバレンタインチョコをまとめて贈るというものでした。もちろん、一生分のお断りをされました。

　おととしの作戦は、お前自身がチョコと一体になり宅急便で配達されろというものでしたが、受け取りすら拒否されてしまいました。

　去年はもう、ゼットンと付き合わなければ、お前んちのチョコに毒を入れるという脅迫まがいのものでした。もちろん、さらに嫌われました。

　今年は、さすがの私も、お手上げです。シッタリンジンの歌にプレゼントという歌があります。キリンが逆立ちしたピアスとか、いろんなものをプレゼントしてはくれるのですが、肝心のハートだけはくれなかったという歌です。ゼットンの場合、ハート以前にプレゼントだけなら受け取ってもらえてただけなのでした。そのためにバレンタインというものがあるような気さえしてきました。

　どうやら、今年からはストーカーはやめてゼットンは新しい恋を探すようです。手当たりしだいにチョコを投下させる模様です。

　とりあえず、私のもとにも投下させやっがたので、空手チョップで粉砕しておきました。