軍団モモオ

　　昨日、街で小学生のころの担任の先生にばったり会いました。すっかりジジイになってて、自転車にふらふら乗ってました。なにより切なかったのは、自転車いっぱい大人用オムツを載せてたことです。

　私を小便臭いガキ扱いしてたのが、今は自分が小便臭いジジイに成り果ててしまったのです。しかも、このジジイの情熱も無意味に、私はこんな大人になってしまいました。

　私はジジイに、「お久しぶりですね。」と挨拶してみました。自転車から降りたジジイのズボンはパンパンに膨らんでてジジイのオムツ確定です。

　「○○君じゃないか。元気にしてたかね。」

　大勢の雑草の中の一本のバラに過ぎない目立たない私を、昨日の晩ご飯のように覚えてて驚きました。なんか話をしてみると、今でも教え子のアルバムは大切に見ているそうです。そうやって、忍び寄る死と尿意と戦っているそうです。生徒を自分の子供だと思わんと教師なんてつまらんもんだからな、とうれしそうに語ります。

　こんなに時間が経ったのに、私が先生を見分けられたこと、先生が私に気づいたことで、歳をとるりすぎることも無意味ではないような気がします。

　このジジイ、いや先生は私が小学校の懺悔の時間、プールの中で３回オシッコして懺悔したことまで覚えていました。私は、ただ、みんなに私のことを分かって欲しかったのです。

　先生はいつまでも、私の先生でいたかったのでしょう。あのときのことを説教されてしまいました。

　「プールの中でおしっこをしたらいかんぞ。・・気持ちのいいもんかもしれんが。」と先生は遠い目をしています。

　絶対、オムツの中にオシッコしやがったな、私は少し切なくオムツから目をそらしました。

　先生は、早く帰らなければならないのに（オムツが気持ち悪いのに）、ずっと手を振り続けていました。それが、最期の別れみたいに。