軍団モモオ

　　しばらくぶりに日本に帰ってみると、まだ少し肌寒いです。我が一族に伝わる「アトランティスの教え」の中に、寒ければ運動しろ！運動こそが暖房器具で健康法だ、というのがあります。それで、私は寒い日は腹筋をすることにしています。

　私が腹筋をするのには、もうひとつ悲しい理由があるのです。それは懺悔のようなものと言ったほうがいいでしょうか。

　あれは、１０年ぐらい前のことだったと思います。都会の駅に人だかりが出来ていました。そこには紙で出来た１５センチくらいの人形を言葉で操るオッサンがいました。そのピエロの人形はジョニー君といい、オッサンの「ジョニー君、腹筋、腹筋！」の声に合わせて腹筋をしています。

　ジョニー君はズルをせずに頭に手を回して腹筋をしていました。ジョニー君はなんのトリックもなくオッサンの言葉だけで動く忠実なしもべでした。

　陰陽師の映画を見たばかりの私は、これが紙で作られた式神というものだと気づいてしまいました。このパンチパーマのオッサンは何をかくそう陰陽師に違いないのです。

　陰陽師のおっさんは、「ジョニー君、１０００円だよ！」と式神を売ってくれるようです。私は誰よりも早くジョニー君を買いました。

　うちに帰ってジョニー君を出してみると、何故か釣り糸が入っていました。そして、ジョニー君は私の言葉では動きませんでした。

　どうやら、ジョニー君は他の誰かが細い糸で操っていたようです。

　「オレがサクラみたいになっとるやないかいっ！」

　私はサクラが咲く頃になると、悔しさに拳をにぎり、「ジョニー君、腹筋、腹筋！」と言いながら腹筋をするようになりました。

　それでも不思議なことは、ジョニー君を柱に押しピンで張りつけの刑にしていたのですが、ある日、気がつくと居なくなっていました。

　「ジョニー君、腹筋、腹筋！」