軍団モモオ

　最近、飲んでるところの私は何度も同じことばかり言うと、よく言われます。私は大事なことを何度も伝えたいだけです。人生はこんなに美しいってことを何度でも繰り返し、何度でも歌い、誰かが気づくまで叫び続けているのですが、気が付くとパンツが脱げています。

　さいきん私の父も、お年頃のようか、何度も同じことを言うようになりました。家族の間で、そろそろ脳を交換しようか、という会議が開かれました。

　私が父に会いに行くと、父は喜んで「明日は仕事、休みか？」と３０分おきに尋ねます。私には、ただ何度も私と話したいけど、話題が無く同じことを繰り返し聞いていしまう不器用な父にしか見えませんでした。

　しかし、何度も同じAVで興奮しているという話を聞くと、私は大事な話をしないわけにはいきませんでした。

　「あんたボケてるから明日から猛特訓しなきゃダメさ。」

　私が、そう言うと父は寂しそうな顔をしました。ワシは今のままではいかんのか？と言います。もし、ボケられなくなったら個性がなくなってしまうかもしれん。そう言いいます、最期の頼み事として「あのAVだけは捨てないでくれ。」と、私はたった一つだけ父と約束させられました。
　
　「老い」というのは、なんだか誰もが試されてるようです。知り合いの親たちは、どんど体の自由、それと記憶を失っていきます。一緒にいたければ、それも受け入れていかなければならないようです。どんなに手がかかっても、ボロボロになるのを見せられたとしても一緒に生きていかなければならないのです。たとえ、最後が一番、悲しくとも。

　それが愛だなんて言わないけれど、なにかの覚悟が必要なようです。

　それから、父は任天堂DSの脳を鍛える大人のトレーニングをロボットのようにしています。健康のために生きるとか、ボケないために生きるとか、本当はそんな風に生きていって欲しくはなかったですが、気が付くと私は脳年齢で父を超えてしまっていたようです。

　私は父が捨てないでくれといったAVをひとり見ていました。それは昔ふたりで初めて見たビデオでした。私は父に「父ちゃんスゲ～」って言っていたのを、あの頃のままに鮮明に思い出しました。私は切なくなったので飲まずにはいられませんでした。

　翌朝、目が覚めると知らないうちにパンツが脱げていました。