軍団モモオ

　　　　 濡れ紅葉　　くちびる赤い　　君が踏み

　
　この句は、紅葉を見に行き、モミジよりも赤い口紅をしてる君の方が美しいよ、という俳句に見えます。しかし、現実は厳しいもので、私がこの句をひらめいたシーンは違います。それは秋の夜長に、濡れ落ち葉の中年サラリーマンが、赤いハイヒールで踏まれているのをビデオで見た瞬間です。

　しかも、踏んでる女の子の足は細いのに、血が出るほど痛そうでした。きっと、彼女の足の筋肉は、あの黒い網タイツに鍛えられているのだろう、という俳句です。

　作品というものは、他人がどのように解釈しようが勝手なので、この句を読んだドキドキ初デート女子が紅葉狩りに真っ赤な口紅をして行くのは嬉しいことなのです。

　こういうネタばらしは、本当はしない方がいいのでしょうが、誰かに創作の苦しみというものを少しでも分かっていただければとおもった次第です。お前は分かっていない！なぞとキレる作者もおられますが、そういうのも分からないではありません。私もこの句を詠むまでに、どれだけ沢山のビデオをこっそり見なければならなかったか、人には恥ずかしくて言えないほどです。

　普通の趣味を持った人には分かるはずもありません。
　
　もし、このネタばらしで、赤い口紅で紅葉狩りに行くと男なんてイチコロ！と私ににダマされたと怒ってくる女子が、いるかもしれませんが、それはそれで嬉しいことなのです。

　もし、赤いハイヒールで私を踏みになんか来てくれたりなんかすると、さらに嬉しさ倍増です。

　俳人の正岡子規も晩年は病床の中でしか句を作ることは出来ませんでした。まあ、作者が本物を見て句を造ったかのかどうかなんてことは考えても仕方のないことです。私も句をひねるのはPcの前か、テレビの前かどちらかです。

　もっと言ってしまうと、私はこのブログでしか俳句など詠むことはありません、詠んだこともありません。

　もっと正直に言うと、ハイヒールで踏まれて喜んでいるような、ビデオは見たことも出たこともありません。

　現実と作品とは、所詮そんなものです。