軍団モモオ

　　 私は字が上手に書けません。それでもチビッコたちにサインを求められたりすると、「パンツを脱ぎな！それにサインしてやるぜっ。」と答えます。

　なるべく世間様にみっともない字を見せないよう、字を書かないようにしております。それでも買い物をしたりすると、住所氏名を書けと言われることもあります。

　そういうときは、「パンツを脱ぎな！それにサインしてやるっ！」と答えます。

　そういえば、いい大人になってしまった私のクリスマスプレゼントがペン習字のテキストだったことがあります。それは私がプレゼントした耳つぼダイエット本の仕返しだったのですが、腹が立ったのでパンツが脱げそうになりました。

　それでも最近、任天堂dsの美文字生活のおかげで字も心もキレイになって参りました。このソフトには文字ランクがあり中の上中下、上の上中下とあるのですが、私は上の下まで出世しました。家族の中では出世頭で、「どけっ、上の下が通るぞ！」と中ランクどもを蹴散らしています。

　そもそも、私は自分は字が汚いと思い込んでいただけだったのかもしれません。

　それはむかし中学生の頃のことです。クラスの女の子にペン字８段の女の子がいました。その子は毎週、たわいもない内容の手紙をくれるのでした。字を自慢する機会は少なくなった時代でしたし、何を話したらいいのか分からない年頃でもあったので、私も汚い字でお返事を書いていました。

　キレイな字で書かれると何を書かれても説得力が出るもので、例えば便所に綺麗な文字で、抱いてください、ー電話番号１１０ー１１９とか書いてあったら、迷わず電話してしまいそうになるものです。

　それは彼女が書く冬という美しい文字すら、私に冬を美しく感じさせるほど何か力を秘めていました。彼女は字がキレイというだけなのに彼女の姿かたちまで、だんだん美しく見えてきました。

　最初は彼女の字に反発して、彼女を裸にひん剥き全身に卑猥な言葉で、私の汚い字で埋め、縄で縛ってやりたい衝動に駆られましたが、気が付くと彼女に私の服をひん剥いてもらい、彼女の美しい字で卑猥な文字で埋めつくされ、罵られたいと改心したほどでした。

　そんなクラス内文通生活も卒業とともに終わりました。卒業式の日に彼女は私に、私の腕に彼女の名前書いてもいい？と聞いてきました。私は下半身に書いてもらってもかまわなかったのですが、とりあえず手のひらに書いてもらいました。

　彼女は自分の持ち物に書くみたいなキレイな字で名前を書きました。彼女は私にも書けと言いましたが字が汚いからと遠慮してしまいました。

　そこで彼女の手に私の名前を書き、手でもつないで帰れば文通は続いていたのかもしれませんが、今はもう昔のことです。

　今なら、パンツを脱がして、そこにサインしてあげられそうな、そんな気もします。