軍団モモオ

　　　　年も明けたので、クソ犬の首にしめ飾りをして初日の出を見に行きました。

　３６５日、「明日は生まれ変わって頑張ります。」と言い続けた私が、大晦日は「来年は生まれ変わって頑張ります。」と誓う日なのです。

　私も劇団も方向性を見失っていました。楽をしてシモネタに走る日々。オッパイの美しさを語る戦士が、オッパイを触る戦士に落ちぶれていくようです。忘年会で昔の知り合いが、「むかしのアンタは輝いてたのにな。」と寂しそうに酔いつぶれました。

　私も、何がしたいのか？何になりたいのか？自分自身、よくわかりません。

　そんなことを考えながら、初日の出を見に行ったのですが、山の上に登るのでもなく、近所の土手でクソ犬の排泄ついでです。それでもこの場所は人気で年寄りたちは朝日に向かって祈っていたりします。

　「太陽が全てに色彩を与え始めるとき、太陽が金色だと気づく者は、太陽を直に見ているのだ。」

　アフリカの詩人がそんなことを書いてたのを思い出した頃、太陽は登り始めました。

　年寄りたちは太陽に手を合わせてブツブツ言っています。何が有難いのかよく分かりませんが、太陽が無ければ生き物どころか植物も存在しないのは間違いありません。アフリカの詩人のその詩は「私らは太陽の子」という題だったのを思い出しました。自分が太陽の子であることに気づけば、誰もが太陽のようになれる、という詩でした。

　そうだ、私は歌手になりたいのでなく、消防士になりたのでもなく、ただ太陽のような人間になりたいだけだったのだと気づきました。みんなをあたため、照らし、そして真冬の太陽になるのだ、私は昇っていく朝日に叫ばずにはいられませんでした。

　善は急げです。私はクソ犬を引きずって頬を赤に染め、全力で走って帰りました。そして、こたつに入り、日本酒の熱燗を飲み始めました。

　その日、太陽を見たのはそれが最後でした。


　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しんねん、明けましておめでとうございます。