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菜の花

  菜の花や 月は東に 日は西に

 これは与謝蕪村の有名な俳句です。教科書的な訳をすると、菜の花畑に月と日が同時に出てて絵画的だ、が一般です。まあ、それが感動的かどうかは別にして。

 私が昔、国語の教師だった頃、テストにこの俳句の意味を答えろという設問がありました。

 機械的に採点していた私は、ある生徒の訳に惚れ惚れしていました。その訳は月と太陽は動いているのに、菜の花はじっと、ただ咲いている。あとどれだけ日が昇って月が出るまで咲いていられるんだろう?というものでした。

 絵のように美しいだけで感動するのではなく、そこに菜の花と人生を重ね合わせているから文学たらしめているわけで。私は本来なら部分点2点あげるだけしか許されないのですが満点をつけました。

 私はそういう教師だったので、学校の教育方針とそりも合わず、学校をやめることになりました。女子生徒にイタズラしたのが若干、響いたのかもしれません。

 まあ、それも昔のことです。

 今はダンスで覚える英会話教室のインストラクターをしています。人妻がダンスしながらダイエットついでに英会話も学んでしまえる欲張りなクラスです。そんなことをしている私は日本語を教えるのに多少、絶望しているのかもしれません。

 もう春が近いのか菜の花が咲き始めました。その黄色は私の中の何かを目覚めさせる鮮やかさです。仕事の帰り、菜の花を見ながら歩いていると、「どんぐり先生、お久しぶりです。」と女子高生に声をかけられました。

 昔の生徒なのでしょうが、私が顔を覚えているはずもありません。きのう抱いた女子の顔も、払ったお金額いがいは覚えていないのです。

 それでも、健気な彼女は私の授業のことまで覚えていてくれたようです。私は、この与謝蕪村の俳句を長く寒い冬をじっと耐えて、日が昇り月が出るのをずっと耐えて、やっと春が来て「あっ菜の花や~」と喜んでいるんだと教えたそうです。

 日が東に行かないように、今は辛くとも春は来るもんだよ~と、私が教えたのを毎年、春になると思い出すのだそうです。

 彼女はぺこりと頭を下げて帰っていきました。

 私は「いい先生だったんだねえ~」、そう思いながら少し誇らしげに家路につきました。

 

 

コメント

コメント(4)
No title
私のすきな俳句は芥川龍之介の

『青蛙 おのれもペンキ ぬりたてか』が、好きです。

青蛙目線の物言いと、私が蛙好きだからです。
芥川龍之介の単刀直入な俳句がいいです。
こと、小説になると面倒くさい言い回しをする人だなぁ。思います。
同じ人物でも文字の制限があると、解り易くなるものですねぇ。


美憂

2013/02/24 23:42 URL 編集 返信
Re: No title
なんか芥川はアマガエルのぬめっとした感じがペンキに見えていそうですね。

 おのれ、にしているのでカエル好きではないのでしょう。触りたくないのでしょうねえ。

 ちなみに、私はカエルは食べません。

 

donnguri77

2013/02/25 06:01 URL 編集 返信
nlyvwer@outlook.com

wzbcywnen

2017/08/29 14:15 URL 編集 返信
uldkvegw@gmail.com
劇団 どんぐり  菜の花

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2017/09/02 14:19 URL 編集 返信
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