軍団モモオ

　　　うちの劇団にマジックアイドルを目指している小娘がいますが、不器用です。

　お店の棚から商品を消すマジックなら、私の方がうまいくらいです。そもそも正規のルートで売れる可能性があれば、うちの劇団なぞには関わるはずはありません。

　私も沢山の夢みる少女たちを見てきましたが、みんな有名にならなければ「人生は失敗」という勘違いをしているだけで、そういう期間は誰にもあるもののようです。

　彼女はマジックの練習もせず日夜、売れるための方法を考えています。

　私は変わり者を、もっと変わり者にしてあげるのが任務の劇団関係者であるので、彼女の相談に喜んで乗ってあげます。

　私の「服の消えるマジック」というのを彼女にプレゼントしました。アシスタントの水着どころか、マジシャンの水着まで消えてしまう！パーフェクトなマジックです。ですが、彼女はスクール水着しか持っていません。

　私は「勝手にパンツが脱げてしまうマジック」や「パンツの中からマッサージ器を出現させるマジック」と次々に恋のマジックを生み出し練習させようとしましたが、彼女には勇気がないのか首を縦に振りません。

　「それじゃ私が見世物じゃないですか！」

　彼女は自分の勇気のなさに腹を立てました。そもそも、日本の手品は見世物小屋で産まれたのです。マジックでろくろっ首を演じたのが最初（ウソ）と言われています。アイドルなんて顔のいい見世物じゃね～か、と私は思いましたが、彼女にはろくろっ首を演じるよう諭しました。

　そして、彼女は学園祭で思う存分ろくろ首を演じましたが、牛娘（巨乳）に美味しいところを持っていかれ話題にすらなりませんでした。

　それももう、むかしのことです。今では彼女は劇団から去り、普通にスナックで働いています。いつか、むかしアイドルを目指していた頃を思い出し、恥ずかしく思うのかもしれません。

　「人生はマジックみたいなもんだな」と現役アイドルの私はタバコの煙をマネージャーに吹きかけました。