軍団モモオ

　　 ちまたでは、ギターを持たず弾いたふりをするエアギターが流行り、エアバンドなるものも登場いたしました。

　日頃、酒を飲んでオッパイのことしか熱く語らないうちの劇団員たちも「我々はエア劇団ではないのか？」と、今さら気づき始めました。

　演劇というとパントマイムは見えない人生の階段を降りたり登ったりしますし、運動部には空気椅子という肉体訓練があります。

　もともと演劇とは、ありもしない空想の現実（エア現実）なのですから、うさんくさいのが取り柄とすら私は思っています。劇団に加入していること自体、夢の一ページのような出来事ですから。

　それなのに最近、うちの劇団員は中年のオヤジがピーターパンを演じるのを疑問に思ったりし始めました。ピーターパン・シンドロームと騒がれたのは、この世代ですし榊原郁恵のピーターパンをしっているのも、この世代です。

　今、私が書いている「美少年好きのオヤジが大人をバンバン殺していく」脚本への不満も募っているようです。そのへんは私も気を使って「ピーター・犯（ハン）」にしているのですが、美少女好きな劇団員たちは納得しません。

　結局、永遠に少女の好きなロリコンオヤジが主人公の話に書き直しを命じられました。私はかまいませんが、少女を演じるのは小汚いオヤジです。

　そしてラストは舞台の幕が閉じ、舞台挨拶に出てきた主人公は、「これは物語だが、私は本当に美少女（オヤジ）が好きだ～」と美少女（オヤジ）を舞台の上で犯します。

　そこだけが、大事な部分なので些細なことはどうでもいいことです。

　私は、やっとシナリオを書き上げ、万年筆を置きました。長い戦いでした。

　「ウソと偽物が堂々と幅を利かせてるから、ウソを現実に思わせる演劇が苦労するのだ。」
　
　と、ニセモノ芸能人AVを見ながら煙草の煙に目を細めました。