軍団モモオ

　　 きのうの深夜、酒を飲んで寝むりほうけていると、何者かの忍び寄る足音で目が覚めました。

　さては、性に芽生えたとなりの女子中学生が夜這いにきたのか！と私は心と体の準備をしていると、それは女子高生でも、八百屋の未亡人でもなく、ただのクソ弟でした。

　「釣りに行くぞ！釣りに行くぞ！太刀魚祭りぞっ！」

　と、弟は私のせんべい布団をむしり取りました。何やら、ある防波堤で太刀魚がわきまくって港の中で太刀魚の目がギラギラ光って見えるそうです。

　私は太刀魚釣りは危険なので、やらない主義です。太刀魚の歯は鋭く、ミニスカート女子の太モモなぞスパッと切り裂きます。太刀魚釣りの仕掛けも太い鉤爪型の針で、これを食らったら素人では抜くことが出来ません。

　ある医者が言うに、この太刀魚針の貫通した患者を、よく治療するそうで、さしもの赤鬼ですら青鬼の優しさに泣いたそうです。

　私は気が進まなかったのですが、「太刀魚は立って泳ぐから太刀魚ぞっ！」と、いう弟の話を確かめるためにも行ってみることにしました。よく考えてみると、ほんなら「太刀魚」ではなく、「立ち魚」だろ！と思いましたがエサを取るときには本当に立ち泳ぎするそうです。

　私たちは防波堤で、一晩ねばってみましたが1匹も釣れません。防波堤の事情通によると潮の速い大潮の日には太刀魚は釣れないんだそうです。泳ぎがヘタなんで、とのこと。

　とても残念です。私は1番美しい魚は太刀魚だと思っていましたので。飼えるなら飼いたいくらいです（大きくなったら食べます）。

　太刀魚から取れた銀粉は昔は偽真珠として使われていたりしてて、太刀魚は泳ぐ真珠、生きる真珠で。本当はギラギラ光る目より、ギラギラ光る身体を見たかったのです。

　特に銀色というのは水の中で、ひときわ美しいものですから。