軍団モモオ

　　山道を走っているとアナル禁止という看板を見つけたので思わず急ブレーキを踏んでしまいました。ですが、そこにはため池があり沢山のアヒルが泳いでいました。

　ぼんやりアヒルたちを眺めていると、アヒル達は池から私の方へ飛んできました。アヒルは飛べないと信じて生きてきましたが、数メートルくらいなら飛べるようです。

　きのう、ニワトリが群れをなして飛んでいる絵を描いていましたが、アヒルでもゴキブリも意外と参考になります。（私は人に勇気を与える絵を描くのが生きがいなのです）

　アヒルはグワッグワ言いながら次々に私の周りに集まりましたが、私には目もくれず池のそばの小屋までヨチヨチ歩いていきました。もうすぐ、3時なのでオヤツの時間でしょう。その小屋にはリアルバイキンマンのようなじいさんがいて熊手を持って、アヒルたちを池に突き落としていました。

　動物にだけ優しい私は怒りがこみ上げました。

　北京ダックの材料がアヒルだと知ったときと同じ気分です。もう、アヒルを見ても可愛さより醤油のこげた香ばしい匂いが鼻につきます。そう言えば、生まれてこのかた北京ダックなど食べたことがないことに気づきました。もちろん、フカヒレ風はるさめスープしか飲んだことがありません。

　 アヒルたちは、道路に飛び上がって来てはジイサンに熊手で突き落とされるのを繰り返していました。ジイサンに聞くと、そうすると池から逃げなくなるのだそうです。そして、いつかアヒル達が、どうなるのか聞くと、「それは企業秘密アルッ！」と、ジイサンは言いました。

　私は帰りの車の中、ブランキーのスィートデイズを口ずさんでいました。

　　　　　　　「センチメンタルな北京ダック～　悲しい顔も出来ずに死んだ～」


　　アヒル口が可愛いなんて言うのは子供なのさ。私は、そうつぶやいていました。