軍団モモオ

　　 昨日は成人の日でした。

　初めてネクタイを締めたときだけ、私は大人になったと感動しましたが、あとはどんなに毛が生えてこようがこっそり酒を飲もうが大人になったと感動することは一度もありませんでした。

　そう、あれは私が成人式にでたとき、近所に座っている女の子がポロポロ涙をこぼしていたのです。私はニヤニヤしていると、それは見覚えのある顔でした。

　彼女は小学生のときの同級生で、サザエさんのワカメとドラえもんのシズカちゃんは同じ声優がやっていると暴露し、私の夢をぶちこわしたイヤなやつでした。

　そういえば、彼女は小学校の卒業アルバムには大人になったらアイドル歌手になりたいとか身の程知らずなことを書いていましたが、中学に入ると霊感少女に方向転換していました。

　それは、人気者にもなれず勉強も出来ず、もてあました自己顕示欲で珍走団になる少年みたいなものかもしれません。彼女はクラスのアイドルにすらなれないしし、ニコ生の歌い手にすらなれないという現実、大人になる前にそのことに気づかされ挫折してきたのでしょう。

　私は子供の頃からなりたいものなどなく、「早く年金くれっ！」が口癖の子供でしたから、そういう気持ちはわかりません。

　私は彼女にドラゴンボールの悟空はオバチャンが声優してるんだぜ！と昔の仕返しをするために彼女に話しかけました。いろいろ話していると、彼女の泣いているのは一人だけ晴れ着を着てこれなかったのが理由のようです。

　スーツすら着てこなかった私は驚きました。妹の成人式はもったいないから浴衣でいいじゃん！と思っていた私は反省しました。女の子の晴れ着は、私が初めてネクタイを締めて大人になったと街に見せびらかしに行った感動と同じもののようです。

　「みんな、格好だけ大人なのさ」

　私は、そう言って彼女と別れました。その晩、心置きなく酒を飲みました。いつもと同じ味でしたが、少しだけほろ苦いような気がしました。