軍団モモオ

　 ５年くらい前、花見の余興に招待されたときのことです。

　その花見は、どっかの芸能プロダクション主催でした。なんか、私は知らない演歌歌手が壇上で歌っていました。白いスーツに白いピカピカのエナメルの靴。出番が終わった私どもは、「あの靴は絶対、歯磨き粉で磨いてるぜ！」と、酒をかっくらって感心しておりました。

　その歌うたいのバラッドは、すごく丁寧にお辞儀をして舞台を去りました。次の舞台に上がったのは女子だけのダンスチームで、黒いパンツを見せながら踊るというコロンブスの卵的なダンスで、ダンスだけが生きる証の私どもは舞台に、かぶりつきでした。

　ダンスグループも去り、そこの芸能プロダクションの社長らしきツルッパゲ眼鏡のオヤジが私の所にやってきました。名刺を交換して、なんか気が合ったので一緒に飲んでいると、さっき舞台で黒パンを見せてくれたポニーテールの女神がちょこんとハゲ眼鏡の横に座りました。

　そのハゲはポニーテールのオッパイをわしづかみに揉みしだき、ニヤッとしました。

　「ワシはこんなことが出来る～ん！」

　ポニーテールの女の子は、ただ遠い目をしていました。とおおい未来を見ているような瞳で。その中年の汚らわしい手を拒んだ瞬間、未来が消えてしまう、そんな瞳でした。

　その結末がスキャンダルになるかもしれないのにと思いながら、この業界のチャンス引換券が、そんなキレイなもんじゃないことは私は知っています。どっちにしろ、天使も落ちていく世界です。

　ポニーテールの女の子は私に、頑張りますと言ってハゲ眼鏡と帰っていきました。

　それからというもの、「劇団の団長はこんなことが出来ルーン！」と劇団員のオッパイを触っては彼女が有名になることを祈ってきました。　

　それでも、私はそのポニーテールの女の子を見かけることは二度とありませんでした。テレビでも、すごく小さな舞台の上ですらも。