軍団モモオ

　連休ですね。わが家に弟が帰ってきます。今、世界で１番会いたくない男です。この男は私とは違い、虚言癖があります。この男のせいで、ほらふき兄弟と近所の笑いものでした。

　子供の頃でした。トイレから「うんこから血が出たあ～。」と弟が血相を変えて飛び出してきたのです。母が心配して、見にいくと、うんこにさつまいもの皮が付いていただけでした。しかし、それは私の恥ずかしい過去にされてしまっています。

　あれは中学生の頃でした。私の過激なエロ本がどうしても欲しかったようで、弟の誕生日に５００円で売りつけてやりました。このご恩は一生忘れませんと、私を部屋から追い出しました。私はくれぐれも、見つかっても、人のせいにするなよと念を押しました。

　ある日、家に帰ると弟の部屋のど真ん中に、そのエロ本が置いてありました。弟が帰ってくると面白いことが起こりそうで、私はわくわくしました。

　弟は帰って来ると、ばたばた何かを隠そうとしていました。その不振な物音に母が部屋に入って来ようとしたのです。弟は必死に抵抗したのですが、母はそのエロ本を発見してしまいました。

　弟は、エロ本を熱いまなざしで見ている母に「こんな過激なん、わし知らん。兄貴のや。」と涙を流し始めました。母はだまされて、私が犯人扱いです。父は「こんな過激なん、わしでも赤面するわ。」と、コレクションに１冊、加えました。

　ときどき、覚えの無い恥ずかしい写真が私の机の中に入っていたり（サイン入り。私の名前宛で）、あまり行かないビデオレンタル店から割引券が届いたりします（いいの入りやしたよ。とか書いてあります）。

　うちの兄貴は変態やから、弟はうれしそうに笑います。
　いつか変態兄弟と笑いものになる日が来ると思います。


　弟は釣りに行くぞ。と楽しそうです。何をつりに行くのか聞くと、昔と同じように答えます。「くじら。」

　子供の頃と変らない笑顔で。