軍団モモオ

　　親孝行な私には、毎日が父の日と、母の日みたいなものですが、今年の母の日はパン焼き器を買わされました。

　パン焼き器を買ってくれたら、明日からいいお母さんになれるんだそうです。

　どうせ、パン焼き器なんか使わないだろうと思っていましたが、届いて半月が経ちますが箱を開けた形跡がありません。しかも、邪魔なので私の部屋に放置されています。

　だいたい、私がコーヒーメーカーでコーヒーを沸かしている横で、めんどくさいと言ってインスタントコーヒーを飲んでいるような輩です。忙しいから待てんのじゃ！と母は言います。

　さすがに、これは注意しないと来年は餅つき機を買わされるはめになるので、私はパン職人になる夢はどうなったのか母を問い詰めました。

　「パンなど、お前が焼けっ！」

　逆ギレされました。説明書を読むのが、メンドウだと言い放ちます。作る前に挫折して、買っておしまいになることを繰り返し、ミシンや圧力鍋が私の部屋に置き去りにされているのです。

　仕方ないので、私が圧力鍋でプリンを作り、家族がプリン嫌いになったこともありました。私は７２色の色鉛筆を持っていますが、これも母の色鉛筆教室の通信教育のお下がりです。

　むかし、私が小さかったころ母の似顔絵展に出した絵がデパートに展示されたことがあります。会場にいく母はめかしこんで一番好きな服を着て、嬉しそうにデパートで気取っていました。

　いま思うと、いつまでもキレイな母でおようと、いつまでも絵を描いていてもらえるような母親でいようと思っていたのかもしれません。

　プレゼントとか金を渡して、終わらせてしまう母の日は多いのかもしれません。しかし、私が両親のためにパンを毎日、焼くのが一番いいのは私も分かっているのでした。

　そうしたら、毎日が母の日父の日になるんだろう、そう思いながら私はパン焼き器を、そっと押し入れの奥にしまいこみました。