軍団モモオ

　　さいきん、劇団用に恥ずかしプロレスという絵を描かされておりました。

　恥じらいのない私としては、描くものは具体的に言ってもらわないと困るのですが、だいたい依頼はアバウトなもんです。仕方ないので恥ずかしスペシャルというプロレス技を考案し、描いてはみたものの、なんかスペースがあったのでチアガールとかテントウムシとか描き足してしまいました。

　これは、ヘタなのをごまかす、いつもの高等テクニックで、ゴチャゴチャ描き足します。

　いつものように、やっつけで絵を持っていくと、どんぐり2号はオッパイの周辺をテントウムシが這っていたのがいたのが気に入らないのか、書き直しを示唆してきました。

　「なんで、余計なものを描いてテーマを薄めるんだっ！」

　2号は、そう言います。でも、それはアジサイのせいなのです。

　そう、あれは私が絵を描くのが嫌いな小学生の頃のことで。私は花を描くのも苦手で、図工の時間に花を書かされていたのですが、いつものように一筆書きで一輪の紫の花を描いて放心しきっていました。

　すると、女教師がやってきて、もっと沢山の花を描いてみなさいと言います。女教師は私のタイプなので素直に花を書き足しました。

　ちょうど、その時期は梅雨で、その女教師は私の絵に、さらに花を描き足し、私の絵は見事なアジサイに生まれ変わりました。

　「ねえ、小さい平凡な花でも集まったらキレイに変わるでしょう。」

　先生は、そう言って微笑みました。みんな、もっと寄り添えたら、もっと美しくなれるの、そう先生は私に教えてくれたのです。

　という、そんなウソの言い訳をどんぐり2号にしてみましたが、描き直しはくつがえりませんでした。

　その帰り道、雨に滲んだアジサイは、私がアジサイの花など描いたこともなく、これからもアジサイを描くことはないのをアジサイの方が私より知っているようでした。