軍団モモオ

　




　　弟と釣りに行ったときのこと、夜が明ると魚をもらいに、ネコが近寄ってきました。

　黒いのと、もう一匹は血統書くずれか残念なガラが入っています。目が合うと、ニューにゃー待っているようで、私はネコのためイソベラを釣ってやることにしました。

　イソベラというのは、ヌルヌルで毒々しい色をしているので、あんまり食べません。刺身にしたり、煮たり焼いたり、ほんとは美味しいらしいのですが・・・。

　さっそく、２５センチくらいの青いイソベラが釣れました。青酸カリのような青です。それをネコに向かって投げてやると、残念ガラが猛ダッシュで奪い去りました。黒いネコは恨めしそうな顔をして、こっちを見ています。

　イソベラなど、いくらでも釣れるので、また釣って投げてやると黒いのは、その場でバリバリ食べ始めました。

　しばらくすると、残念ガラも帰ってきて、私は交互にイソベラを投げ与えました。そのとき、弟は小さいカワハギを釣っていたのですが、フグを釣ったようです。

　いつもは、フグを釣ると私に投げつけてくるのですが、今回はネコに投げつけました。猫たちは匂いを嗅いで、そっぽをむきます。そういえば、鳥もフグだけは持っていきません。なにかしらで分かるのでしょう。

　私は10匹以上、イソベラをネコにプレゼントしていました。弟が私の優しさに呆れていたので、フジコ・ヘミングというピアノ弾きのことを話してやることにしました。

　彼女は売れないころに、金も無いのにノラ猫をたくさん拾ってきたり、エサをやったりしていたそうで、売れたのはネコの恩返しだと言っていました。

　それなら、兄貴は魚を海に逃がしてやればいいのに、そう弟に言われました。それなら釣りのエサのゴカイも逃がしてやればいいのにと、私も言いかえします。

　やがて、さすがにネコたちも満腹したのか、顔の掃除など始めました。

　その姿は、なんか招き猫のポーズのように見えます。あのポーズは顔を洗っているとこなんだなと感心していると、フグが目の前に飛んできました。

　「恩返しろっ！」

　と、弟は死んだ魚のような目で、私のほうを見ていました。