軍団モモオ

　　秋になりましたが、まだ昼間は暑いので、浜辺でビールを飲んだりします。

　真夏に女子の水着をツマミに飲むというのが、風流というものかもしれません。しかし、私のような欲のない人間、砂浜でカニとたわむれてるだけで満足なのです。

　私は家で酒を飲ませてもらえない哀しいアル中の2人と、ピクニックに行くとウソをつき、ひっそりと砂浜で飲んでいました。
　
　シーズンオフの今は、浜辺でバーベキューをしても、見つからないと怒られません。それで、テトラポッドに貼りついてる貝を焼いておりました。トコブシと呼ばれる貝に似ていますが、違うらしく私たちは（プチ）アワビと呼んでいます。

　浅瀬の岩の裏には、小さいウニもいて、それもツマミにします。たまに小さいカニも発見されますが、それも焼いて丸ごと食います。

　ビールを4本くらい空にしたとき、アル中のY男が海の上を人が歩いていると興奮し始めました。

「この、酔っ払いがっ！」
　
　と、海を見てみると確かに海の上を人が歩いています。黄色い服を着ているので、あれはマリンちゃんかもしれません。ぴっちぴち～💛とか、言っているのでしょう。

　しかし、勉強しないまま大人になった、視力だけが自慢のT男が、あれはカヌーだと言います。そういえば、黄色いのは救命胴衣に見えないこともありません。しかし、カヌーに立って乗るというのは、お行儀が悪いです。

　スマホで調べると、それはカヌーではなくサーフィンの一種で、パドルを持って乗るものだそうです。クッソだせ～っ！絶対オレたちの方がオシャレ生活だっ、と、Y男は爆笑しています。だって、それは時代劇に出てくる死体を乗せた船を漕ぐ船頭にしか見えなかったからです。

　しかし私だけは、ここがヌーディスト・ビーチだったらいいのに、そんなことを考えていました。

　EDに悩み、死を決意した男が海に来て、そこはヌーディスト・ビーチで、彼は完全にEDが治ってしまい、みんなに祝福されたクラーラオジサンの話を、私は哀れなアル中どもにしてやりました。

　遠くに見えるサーファーは、波のない静かな海の上で、ずっと突っ立ったままでした。