軍団モモオ

　 いま、赤い月蝕を見ています。火星のようです。

　さいきん、天体の影響か腰痛を発症し、少し酒を控えておりました。それで、週に1度は休肝日にしています。行きつけの喫茶店にてモーニングビールを飲みながら、その話をすると看板ウエイトレスが、「普通の人は一週間に1度も飲みませんからっ！」と、ミニスカートをひらひらさせました。
　
　「はあんっ、貴様は明日から罰としてノーパンで出勤してくるのだっ！」

　と、私はノーパン喫茶など興味もありませんがキレました。それにしても、なんで私が好きでもない酒を飲み続けてきたのかと、不思議な気もしています。

　あれは、本格的に酒を飲み始めたのは、私が高校を卒業して最初の同窓会のことでした。

　私は二十歳になりたてで酒の知識も、ほとんどありませんでした。二次会に行くのも付き合いのことだけで本当は副委員長にボウリングに誘われていて、そっちではじけたかったのです。

　しかし、それはクラスいちモテなかったTは、それを許しませんでした。先に社会人になっていたTは私達を真っ暗な酒場に案内しました。私は酒場経験がなく、好奇心と夢と冒険でドキドキしいてました。

　その店は忙しいのか、なかなか一杯目の酒すら運ばれてきませんでした。なので、私は大声で店員を呼びましたが、Tに恥ずかしいことはやめろっ！と制されました。

　酒場のルールは違うとTは言います。彼はタバコも吸わないのにライターを持っていて、それをつけたり消したりさせ始めました。

　「これが夜のサインだっ！」

　彼の、その言葉に私はカッコいい～と思いましたが、私たちのもとには誰もやって来ません。それでもTはライターをシュボッシュボさせ、それはまるで沈没船のSOSのように見えました。

　そして、しばらくして店の女の子達が、やってきました。

　～中略～
　
　そして2時間後、私たちは女物の香水をプンプンさせながら、そのノーパンパブを出ました。

　そのときの経験が、もし楽しくなかったならば私は多分、私は酒飲みにはなっていなかった気がします。私は酒よりも、酒に付随してくるもののほうが好きだったような気もします。こんなに飲んでもアル中になることもなかったのですから。

　そして、私は欠けて暗くなっていく空を見ながら、一つ、溜め息をつきました。