軍団モモオ

　　　まだ、禁煙しています。何度も禁煙に失敗していますが、それは記憶とパンツがなくなるほど酔っ払い、目が覚めるとタバコを吸っていたという現象によるものです。

　それで、今回の禁煙は、お外に飲みに行かないようにしています。そのせいで夜というものが、こんなに静かで長いものだと生まれて初めて気づきました。

　そういうことで、おうちで飲んでいるのですが、さみしいので吉田類の酒場放浪記なぞ見ながら飲んでいます。それは立ち飲み詩人の人が味のある居酒屋へ行って、最後に俳句を一個よんで去っていく番組です。

　居酒屋で大切なのはノレンをくぐって店に入る瞬間なのです。パチンコ屋などは店に入ると人相の悪い先客がワシの隣に座るなオーラを出してきますが、居酒屋は入った瞬間、雰囲気になじめるかどうかが意外と大事です。

　この番組のいいところは入店の仕方に違和感ないのです。そのへんは私も名人の域ですから、全裸で私が入店しても常連客は立派な人が来たねえくらいにしか思いません。

　そして、この番組は変な酔っ払いがいたら絶対に絡みにいきます。

　ともかく、慎重に大事そうに店の看板娘たちが、楽しそうに嬉しそうに料理を運んでくるのを見てると、それだけで私は幸せな気分になります。

　そして、店を出る時のノレンをくぐって額をなでる新鮮な風の心地よさというシーンが必ずあって、最期に俳句の字幕が流れ番組は終わります。

　それにしても、この番組に出てくる客たちの半分はタバコを喫っています。むかしのウルトラセブンに出てくるウルトラ警備隊なんかもタバコをスパスパ吸っていて笑いますが、こんなご時世にタバコ喫いなど、保護者からクレームが来そうなものです。

　まあ、この番組自体10年くらい前のものですし。

　ひょっとしたら私は酒を飲むところが見たいのではなく、絶滅危惧種としてのタバコ飲みを見たいだけなのかもしれません。そのうち、タバコ飲みの顔にもタバコもモザイク処理される日が、もうそこまで来ているのかもしれません。

　私は番組の中でタバコを喫っている女性客を見つけて、ものすごく懐かしく珍しいものを発見した気分で興奮していました。しかし、それは珍しいものを見たという感慨だけで、今の私はタバコを喫わない側の人間になっていたのに少し驚きました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　　　　　　おつまみは　　看板娘の　　好きぼくろ