軍団モモオ

　　私の街にもサクラが、ちらほら咲き始めました。まいとし、この時期はサクラの下にて、降りしきる花びらの下、ギターを弾きたいと思ったりします。

　ちなみに、私はギターは弾けません。正直に白状すると中学生のころ、近所のオジサンに赤いエレキギターをもらいました。毎日、練習するという約束で入学祝い代わりにタダでもらったのですが、わずか2か月後Fに挫折し、友人に二千円で売ってしまいました。

　もう昔の話ですが、ギターをくれたオジサンに申し訳なく思っています。それで、サクラの咲くころになるとサクラの木の下でギターを弾きたくなるのです。

　　桜の木を切ったワシントンは正直に白状しましたが、私はオジサンに白状しませんでした。

　その赤いギターは、今日から誰でもロックミュージシャンというキャッチコピーのくさいジャージの兄ちゃんの写真で雑誌の後ろに載ってたりする通販の商品でした。背が伸びる薬とか空手の通信教育とかと同じ扱い。

　それで、オジサンも後ろ暗いのか、「よっ練習してる？」などと、ギターの話題を私に振ることはありませんでした。

　その通販の写真のギターが、自分の持っているギターだと知ってしまった私は、自分がこのギターを持っている以上、ロックスターを目指していると思われてしまうということに衝撃を受けました。

　私はギターが弾けたら、ちょっとモテそうな気がしただけの出来心だったのです。

　それで、私はオジサンに黙ってギターを友人に売ってしまいました。もちろん、私から買ったことは堅く口止めしました。その友人にロックスターを目指してるのかと聞くと、誰しも人生に一度はスターに憧れるもんだと彼は正直に白状しました。

　ちょっと意外でしたが、私も通販でヌンチャクを買ったことを思い出して、あれはダマされたんではなくて憧れていたんだなと少し納得しました。