軍団モモオ

　　　近所を散歩していると、ロリババアと呼ばれる熟女が頻繁に出現します。

　口が裂けたのかと思うくらい赤い口紅に、ゴスロリの服で、ミニチュアダックスフントを従えています。ちなみに、この前のブーツはショッキングピンク！こんなファッション、どこで調達するんだと、いつも感心します。

　しかし、最先端のファッションは一般人には理解されないもので、いつもロリババアは一人ぼっちでした。この前なぞ、ダックスフントすら逃げようとしました。

　それは今年の春は長雨が多かったせいで、そのダックスフントが犬用のライフジャケットをつけて散歩させられてたせいなのは、誰の目にも明らかでした。

　きのうは子供の日が近いので親戚の女の子がプレゼントをねだりにきました。なんか服が欲しいようなのです。この前までママが選んだ服を着てたのに女の子の成長は早いものです。

　ともかくBOOKOFFの古着コーナーに連れていくと、彼女は走り回ってピンクのヒョウ柄のブラウスを持ってきました。

　「これ、カワイイ？」

　と、言うので、値札を見ると５20円だったので、それを買ってやることにしました。いちおう試着してみるというので待っていると、ロリババアを発見しました。

　なにか思いつめたような悲しげな顔をしているので、彼女は似合わないと気づいてしまったカワイすぎる服たちを売りに来たのかと思いました。

　この店にある、いや、この町にある恥ずかしい服のすべての供給源が、このロリババアだという現場を見たのだと私は確信しました。

　しかし、彼女は服を選んでいるだけでした。手にしていたのは誰も手にしないくらい派手でカワイイダチョウのトレーナーでした。カワイイすぎて誰も着てあげられないのが、何かすごく可哀そうでした。

　ロリババアは、そのダチョウのトレーナーを助けるために生まれてきたかのごとく、颯爽と凛々しく、それを持ってレジへ向かいました。

　私にはロリババアが、カワイイものすべてに手を差し伸べてしまう、心美しい天使に見えていました。

　親戚の子が試着が終わったようで、カワイイ？と聞いてきます。あと何年かすれば、可愛くなりたいからキレイになりたいへと変わってしまうのでしょう。

　「とっても、かわいいっ！」

　私は、そう言って店を出ました。