軍団モモオ

　　　もう真夏です。毎週、土曜日になると夜市をやっていて、飲みに行くにしても、そこを通らなければなりません。

　イカ焼きや焼きそばの匂い、赤ちょうちんの明かりに金魚すくいの真っ赤な金魚とか、こういう雰囲気は落ち着きます。時間を忘れる感覚とでもいいましょうか。前世占いでアフリカの貴族と言われた私も、前世も来世も生粋の日本人なんだろうなとホッとするひとときではあります。

　そもそも、洋ピンのAVでは興奮もしませんし。そもそも、アフリカにAVはあるのでしょうか？

　それにしても、最近の浴衣と言うのは丈が短く、太ももを剥き出しにしているのは好感は持てるのですが、いかんせん幾世代も前から生粋の日本人の私には違和感があります。

　かき氷にしても、ブルーハワイアジだの、マンゴーだの人工着色で私の身体が拒否しています。虫を売っておるとのぞいてみれば、どこの国から来たのか、なんとかヘラクレスオオカブトだの、アマゾンオオクワガタだのが私より高額で売られています。

　もう、私の知っているような夜市はありません。

　もし焼きそばを食べて、私の知っている味とまったく違っていたらと考えると、恐ろしくて焼きそばすら買えないのでした。それは、あの屋台の近くで歩きながら食べるから美味しいのであって、帰って食べてみるとまったく別のもの。

　そのイベントが最高の調味料だと子供が気づくまでは、かかっていられる魔法のようなものでした。焼きそばは好きではありませんが、夜店の焼きそばが大好きでした。

　そして、けっきょく私は夜店で何も買わずに村さ来に入り、ゴミ箱にオシッコをしそうになるほど酔ってから、スナックに入りました。

　その店の女の子は全員、浴衣を着ており私に、

「ねえ、かわいい、かわいい？　」
　と聞いてきます。

「ワシのほうがかわいい。」
　そう私は答えて、またゴミ箱にオシッコをしようとしていました。