軍団モモオ

　　まっ昼間、真夏の街をかっぽしていると、知り合いが急に座り込み、服を脱ぎ始めました。

　すると、知り合いのヒョウ柄のシャツの隙間から足長バチが、ブ～ンと音を立てて何事もなかったかのように、はるか彼方へと飛んでいきました。

　知り合いはコブラに噛まれたくらい痛がり、騒いでおりました。何やら蜂に刺されたのが産まれて初めてのようで、それはそれは子供のように痛がります。5年に一度くらいのペースでハチに刺されている私が、足長蜂だと言っても、あれは大スズメバチだったと知り合いは言い張りました。

　たしかに、人によっては毒に対しての反応は大小ありまして、同じ毒虫に刺されても、包帯を巻くほど腫れる者もあれば、オシッコをかければ治る程度の者もいます。

　私の子供時代にはハチに刺されたら、オシッコをかけなさい！と学校やテレビで教えられていた世代。

　あれはたしか、私が小学2年生のころのこと。一緒に花畑で遊んでいた女の子が、小さなミツバチに刺されました。彼女はとても痛がり、急いで手当をしないと手遅れになると私たちは慌てました。

　しかし、彼女は人前でオシッコをするのが恥ずかしくて、どうにも下着を下ろせないでいるの悲しき乙女心。そこは、ひとつ私がひと肌ぬぐしかほかありません。私は下着を下ろして、彼女にオシッコをかけましたが、いつもより興奮したせいか、患部以外にもけ大サービスでオシッコをかけまくりました。

　それから、すこしずつ私の人生は狂っていったような気がします。

　それはともかく、私は蚊に刺されても10分くらいすれば痒くもなくなるし腫れもひきます。釣りをしていて、葉オコゼなどに刺されてもジンジン痺れるくらいで、腫れもしません。

　人によっては、蚊に刺されて医者に行くくらい腫れたり、オコゼに刺されれば足が倍になるくらい腫れるモノのようです。しょせん個人差のあること。別に私はハチの子が大好物であったり、マムシドリンクを毎日のんでいることもありません。

　先日も弟と釣りに行ったときに、二人そろって蚊に刺されまくっておりましたが、私はすぐに腫れも痒みも消えるので弟は羨ましがっていました。

「でも、それは兄貴が蚊に近い生き物だということじゃね？　」
　と弟はふいに言ってはならないことを口にしました。

　ふと私は子供のころ、私にオシッコをかけられた少女が、
「この、毒虫っ！　」
　とでも言いたげな表情を浮かべていたのを思い出しました。

　きっと、彼女にとってはミツバチなどより、私が毒虫だったことは間違いないことなのでしょう。

　もうすぐ、夏も終わるようでヒマワリはすっかり枯れ、かろうじて立っているようでした。