軍団モモオ

　　　飲み会に行く途中、ブックオフで古着を見ていると、６0年代テイストのコカ・コーラの茶色のスカジャンを見つけ、カッコいいので買ってしまいました。値段は520円。

　あと、ワゴンにぶちこまれていた幸せのブーメランも、ついでに買ってしまいました。これは、
「こいつに幸せを乗せて投げたら、二度と戻ってくることはなかった。」
　と言って、溜め息をつくためだけに買いました。木製なのに値段はお買い得80センチの280円。

　さっそく、オレってオシャレすぎるなと思いながら、コカ・コーラのスカジャンに幸せなブーメランを背負って飲み会に出かけました。日本刀やマシンガンを背負って出かけると銃刀法違反で捕まる可能性がありますが、ブーメランならそんな心配はいりません。

　村さ来で今週の戦いの疲れをビールとやっすい日本酒で癒していると、ともに飲んでいた奴らが私に嫉妬したのか、
「赤い自販機に缶ジュースを詰める人みたいですよ。」
　と思っていても言ってはいけないセリフを吐きました。

　私も、うすうす気づいていましたが、そこはカッコいいとダマされてコカ・コーラの宣伝をさせられてしまっている悲しき生き物には禁句です。

　中学の時、陸上部にプーマのイメージダウンになるのでお前は着るな！と言われていたM君のことを思い出して胸が痛みました。

　しかも、その服は私がコカ・コーラの自販機を襲撃しているときに、たまたま居合わせた自販機を詰め替えの人もついでに襲って、身ぐるみはいだ戦利品だと思ている者すらいました。

　たしかに貧乏なころは、自販機のおつり口には用事がなくても手を突っ込んではいましたが、私の弟は自販機の下を覗くタイプでした。

　通りすがりのカップルに不審がられて、
「安心して買いなさい、買いなさい。」
　と言っているところを私の知り合いに見つかり、報告を受けまたことがあります。

　私のカッコいいと思っているものなど、しょせんブーメランの付け焼刃であることを思い知りました。そして、さらに哀しかったのは私の背負ったブーメランには誰一人触れなかったことでした。

　ブーメランを背負って生きていくのは恥ずかしかったので、そっと店に置いていくことにしました。しかし、帰ろうとすると店の外まで店員が追いかけてきて、迷惑そうに、
「お忘れですよ。」
　と私に幸せのブーメランを付きつけました。

「やっぱり、帰ってくるね～。」
　そう言って、私は溜め息をつくほかはありませんでした。