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   師走のせわしない街を、ただ酒だけ買いに近所のマルナカに行くきました。

 平日の午後で人もあんまりいなくて、酒瓶にいっぱい指紋を付けていると、若い女の子が独り言をぶつぶつ言いながら店内に入ってきました。耳を傾けると、今日は雪が降ったので、雪のような真っ白なシチューにしよう、そう彼女は見えない何かに語りかけているのでした。

 私が小学生のころ、
「こんな世界、ぶっ壊してやるっ!」
 とブツブツ言いながら疾走する自転車のオバサンがいて、私たちは自転車の詩人と呼んで目を合わさないように何事もなく行き過ぎるのを天に祈りました。オバサンは遠い目をして歯茎は紫色で、インドで産まれの破壊神のようで、子供のパンツくらい3秒で引き裂きそうでした。

 今は私も成長して一人前の男、そんな小娘の詩人一人、目を逸らすようなこともありません。少女は細い紐の財布バッグを肩からさげ、引きこもりの中学生のような出で立ちで私を見上げました。

 少女はまた何かブツブツ唱え始めました。きっとそれはガッツポーズした私の逞しい腕に、
「あの腕枕ほしい。」
 とかなんとか言ってるのでしょう。
「オレの力こぶにキスしな。」
 私がそう言おうとしたとき、彼女の言葉は、
「あの赤い鼻はきっと前世も来世もトナカイだからよ。」
 で、野菜売り場の鏡に映った私の鼻は確かに酒やけで赤く、初夜のシーツのように紅く染まっていました。

 そして、私のハートはその言葉に砕け散り、肉体は野菜売り場に崩れ落ちました。最近、面と向かって悪口を言われることはなく、クリスマス前で調子に乗っていたのです。

 私はなんとか身体を引きずってレジにたどり着き支払いを済ませると、レジのオバチャンが必死に笑いをこらえているのがしゃくにさわりました。たしかに毎回、ナマコと焼酎だけを買って帰る客が来たら私でも笑ってしまうでしょう。
「誰がナマコキングじゃ!」
 そう叫びそうになりました。だから、急いで自転車に戻り飛び乗り、全力でペダルをこぎました。風を切りながら、
「こんな世界ぶっ壊してやるっ!!」
 そうブツブツ言ってみると、なんか一人きりじゃないような気がして心地よいのでした。 
 
 

 

 

コメント

No title

小生は飲み屋街の近くに住んでおります。
どうも忘年会の季節になると、インドからシヴァ神がやって来るようで、
「こんな世界ぶっ壊してやるっ!!」…と言うわめき声があちこちから響いてきます(笑)

Re: No title

いいところに住んでますね。

 私の周りは、世の中ぶっ壊れろと叫びながら自分が壊れていく人ばかりでした。

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