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冒険者たち

 
   男はつねに冒険者であらねばならない、そう言って弟は暗い風俗街の闇に消えた。

 そして、今年は100年に一度の大雪。白い山の頂上が私を呼んでいた。私は導かれるように車に乗り、国道を逸れ、10年前に閉鎖されたスキー場を目指した。

 道は除雪されているが日陰はガリガリに凍っている。ツルツル滑る車を立て直し、手なずけの運転は楽しい。困難のないドライブなんて健全な風俗店と同じだ。

 15キロほど登ると除雪されていなかった。80センチは積もっている、もう車では進めない。雪かきをしている老婆に、

「この先に妖怪が出るそうですね。」

「そんなもん、きいたことねえ。」

 そこは、10人しか住んでない村だった。見渡すかぎり、雪、雪、白、しろの世界で、「スノーおおおお」と絶叫してくる私の冒険はついえた。そして、私は雪解け水を沸かし、カップヌードル(カレー味)に湯を注いだ。極寒の世界では絶対にカレーだ。

 麺をすすった後、ドロッとしたスープを飲む、全身が温まる。今度インド人に会ったら、カレーは身体を温めてくれる食べ物だと教えてやろう。

 道のわきのサクラが蕾をふくらませていた。もうすぐ春だから。何本かあるけれど全て、どれもちょうど雪の高さの少し上に蕾をつけている。きっと桜はどれだけ雪が積もるか知っているのだろう。そして、この雪が溶けたら桜が咲くのだろう、そう思った。

 
     今日の一句

            桜の木  ツボミ埋もれぬ  高さ知り







 

 
 

 

コメント

コメント(4)
冒険者
 僕の勝手な拡大解釈が成り立つかどうかわかりませんが、冒険者は常に死と隣り合わせにいるということでしょうか?それが男たるものの美学でしょうか?或いは危険にビビらない修練を積む。不動心の修行。というよりかは、危険に立ち向かうスピリットでしょうか?スポーツ冒険家と称する人がいましたが・・・冒険で、今、閃きました。詩を作ってみようかなと思いました。フレーズが降りてきました。
 劇団どんぐり様のお写真から音が聴こえてきません。無音。寂寥感。まさい多才です。

HABOR33

2018/02/24 12:14 URL 編集 返信
わはは…風俗街で性病に侵される危険を犯すか?雪山で凍死する危険を犯すか?
あえて危険に挑むのが冒険者の心意気です…後の事は心配せず、心置きなく挑戦して下さい(笑)

sado jo

2018/02/24 14:18 URL 編集 返信
donnguri77
Re: 冒険者
HABOR33様へ

 あっ、真面目に人生とか冒険とかちゃんと考えてませんでした。カメラはスマホエクスペリアz3でした。

donnguri77

2018/02/24 14:30 URL 編集 返信
donnguri77
Re: タイトルなし
 sado jo様へ

 自殺するくらいなら無茶クチャすりゃいいのにな、と思うことはあります。

donnguri77

2018/02/24 14:34 URL 編集 返信
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